僕はそのファイルを抱きしめて  別の涙が頬を伝わるのを感じた

僕はそのファイルを抱きしめて  別の涙が頬を伝わるのを感じた

僕はそのファイルを抱きしめて  別の涙が頬を伝わるのを感じた

20××年、秋。
あの大地震があったとき、
僕は小学生だった。

母と離ればなれになって、
ずっと避難所で泣いていた。

ある日、避難所にヘルメットを被った女の人が
やってきて声をかけてきた。
「○○くん?」
僕はうなずいた。

女の人は色々僕を気遣ってくれた後、
一冊のファイルを差し出した。

「あっ、このファイル、
お母さんが何か説明しようとしていたけど、
震災でなくなっちゃったやつと同じ・・・」

「このファイルはね、
私がお母さんと一緒に作ったんだけど、
そのとき、お母さん色々話してくれてたんだよ。
自分に万一のことがあったとき、
君のお世話を、お母さんと妹さんに
お願いしようと考えていて、
受取人を妹さんにされているんだよ。
そして、君が大学まで行きたいと思ったときに使えるようにって。
私は、お母さんの想いの詰まったファイルを、
一緒につくって預かってきたの。
これで安心ねって言ってたわ。」

僕はそのファイルを抱きしめて、
別の涙が頬を伝わるのを感じた。

その僕も、今では結婚して、もうすぐ第三子が生まれる。
その子のための保険もファイルに加えてもらうために、
サービスショップに向かう。
家族への想いを込めてもらいに。




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