最後まで母がきちんと育ててくれたことを知って 涙が止まらなかった
私の結婚式の前日に祖母に渡された
オレンジ色のファイル。
「きちんとファイル」と書いてある。
私は3歳のときに両親が離婚し、
母に女手ひとつで育てられてきたが、
その母も私が15歳のときに亡くなってしまった。
乳がんだった。
それ以来ずっと祖母に育てられてきたのだ。
何不自由ない暮らしで、
大学にも行かせてもらったが、
なんとなく親がいない劣等感なのか、
他の人とは違う自分を感じていた。
大学からつき合っていた彼と結婚が決まり、
やっと祖母を楽にしてあげて、
恩返しが出来るかと思っていた。
「何、これ?」
「あなたのお母さんね、離婚した後、
生命保険に入っていたの」
高校、大学とその生命保険を少しずつ取り崩して
今回の結婚費用で全部使い切ったとのことだった。
私はお金がどこから出てくるかなんて、
まったく考えずに過ごしてきた。
最後まで母がきちんと育ててくれたことを知って、
涙が止まらなかった。
このファイルは私の大切な嫁入り道具となった。