生まれ来るわが子に 父のような愛情を注ごう
「オレンジ色のファイル・・・」「オレンジ色のファイル・・・」
私はブツブツと呟きながら探し続けた。
探しながらふと思った。
「なんでこんなことになってしまったのか?」
「どうして父が・・・。」
私と父は、
母は幼い頃に亡くなっていたので、父子ふたりきり。
でも結婚して私に家族ができると、
だんだんと父と私の会う機会は減っていった。
そんな矢先。
父が末期のガンになった。
突然の宣告に目の前が真っ白になった。
「孫の顔を見るまでは死ねるか!」
それが闘病する父の口癖だった。
やせ細っていく父の顔。
しだいに大きくなる、妻のお腹・・・。
あと3ヶ月で出産予定日というある日。
父は息を引き取った。
・・・間に合わなかった・・・。
父の最期の言葉は、
「オレンジ色のファイルを探してくれ」だった。
ファイルを見つけたときに知った。
父が私を受取人にした保険に入っていたことを。
私も生まれ来るわが子に、父のような愛情を注ごう。
その夜私は妻に「私のきちんとファイル」を手渡した。