「ごめん」とも「ありがとう」とも言えない僕に 父が渡したもの
父とふたり、夜の高速道路を走る車の中。
実家から出て、新しい転居先に僕を送ってくれる、
父の車。
昔はよくキャッチボールをしたり、
釣りをしに海へ行ったり、
朝日を見に山へも登ったなぁ。
父とは子供の頃から、男同士の時間を一緒に楽しんだ。
父はきっと大人になってからも、僕と一緒にキャッチボールしたり、
お酒を呑んだり、
一緒に同じ時間を過ごしたかったはず。
だけど僕は、自分の夢を実現したくて、
家を出ることを決めた。
父の気持ちを思うと、何もいえないまま、
車を降りて、父との別れのときがきた。
「ごめん」とも「ありがとう」とも言えない僕に、
父が渡したものがあった。
「きちんとファイル・・・?」
父の車が去った後、ページを開くと僕の名前。
2枚目を見ると、父・・・。
3枚目は母・・・。
最後にメモが貼ってあった。
"いつかはこんな日が来ると思っていた。
離れていても家族だ。ガンバレ!!"
何も言わずに渡した父のことを考えると、
急に父の深い想いに感謝の気持ちでいっぱいになった。
父の携帯の留守電に、「ありがとう」を残した。