家族との幸せな毎日 でも これからも当たり前にあるのだろうか?
「将来は野球選手になりたいんだ!」
幼稚園に通う息子が自分の将来の夢を教えてくれた日。
その晩に僕は夢をみた。
二十歳になった息子に、
今の僕がタイムスリップして会いに行く夢。
息子の夢が嬉しかったからかもしれない。
「よぉ。」
大きくなった息子に、背後から声をかける。
「パパ!」
驚いて振り向いた次の瞬間、
背も伸びて、すっかり青年になった息子が、
急に泣き崩れる。
「おいおい、どうした?」
「パパは僕が中学生になった頃、死んでしまったんだよ・・・。」
未来の息子から告げられた事実。
(そうか・・・。息子の未来に、僕はいないのか・・・。)
そこで、夢から目が覚めた。
今の幸せな家族との暮らし。あって当たり前の日々。
でも、もしかすると夢で見たように、
僕は当たり前にはいないのかもしれない。
夢で会った息子は自分の夢をかなえられただろうか?
僕がいなかったことで、苦労したんじゃないか?
・・・そう考えたら、やりきれない気持ちになった。
一週間後、僕は妻に一冊のファイルを手渡した。
「きちんとファイル」と書かれたオレンジ色のファイル。
「もし僕に何かあっても、これであいつの夢もかなえてやってくれ」
妻は驚いたが、涙目で小さくうなずいた。