仕事はまだまだ 半人前やけどな
「まだまだ半人前やな。」
父が私に言ういつものセリフだ。
父は工務店を経営しており、私は見習い中の身だ。
はやく父に認めてほしいと、一生懸命頑張っているが、
いつも言われるのはその言葉だ。
そんな父が、改まって話があると私を部屋に呼んだ。
部屋には父と母が座って待っていた。
テーブルの上には「きちんとファイル」と書かれた
オレンジ色のファイルが置かれていた。
「それをおまえに渡しておく。
俺に何かあったら、後は頼むぞ。」
父が言った。
「仕事はまだまだ、半人前やけどな。」
そう言って笑う父の顔を見て、
私は初めて父に認めてもらえたような気がして、
涙をこらえて笑顔でうなずいた。