なんで教えてくれなかったの?

なんで教えてくれなかったの?

なんで教えてくれなかったの?

「なんで教えてくれなかったの?」

久しぶりに実家に帰ると
見たこともない薬を呑む父の姿。

いろいろ話を聞いてみると、
私が実家を離れている間に入院をしたとか。

私だけ教えてもらえなかったことと、

「お前が心配する必要はない。」
ときっぱりと言った父の言葉が、

ほんとうは寂しかった。

そしてどちらにしろ、

きっと何もできなかったであろう自分自身が、
ただただ悔しくて、意地でも涙はこぼさなかった。

「あの人は昔から、言葉が足りないだけなのよ。」
母がそんな私の気持ちを察してか、声をかけてくれた。

下宿先に戻る日の朝、母から渡されたのは
「きちんとファイル」と書かれたオレンジ色のファイル。

私が小さな頃から綴られた、何枚もの色褪せたリストに目を落とすと、
優しい笑顔で母が言った。

「ちゃんと準備してあるから、心配する必要がないんだって」

その言葉と、
受取人の欄に並ぶ母と私の名前に、
涙とともに思わずこぼした。

「ねぇ・・・。なんで教えてくれなかったの・・・。」




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