あなたのもとに生まれ 育てられて本当に良かったよ
私が生まれたとき、あなたは泣きながら喜んでくれましたね。
私が幼いころ、離婚してしまったあなたは、
私に苦労をかけまいと、
弱いところも見せずに、ずっと育ててくれましたね。
それでも、好きな野球もやらせてくれましたね。
その分、あなたは数え切れないほどのガマンもしたかもしれませんね。
給食費が払えないだとか、
野球部でボロボロになった道具を変えられないだとか、
お弁当は毎日白米と梅干とノリだったとか、
・・・他にも大変なことはいっぱいありましたね。
無理を承知で大学に行きたいと頼んだとき、
あなたは反対しませんでしたね。
大学に合格したとき、あなたはずっと泣きながら、
おめでとうと言ってくれたのを今でも覚えています。
でも、そんなあなたが入学の準備のときに急に倒れて、
病院に運ばれました。
「がんが全身に転移している」と聞いたときは、
私は涙が止まりませんでした。
しかし、あなたは一冊のファイルを私に渡して、
「これはきちんとファイルといって、あなたをここまで育てた証なのよ。」
とほほえみましたね。
大学のことを気遣って、
全身にがんが転移するまで私にがんのことを黙ってるなんて・・・。
そして母は亡くなり、私は今医者になるため、毎日一生懸命勉強しています。
大変なこともたくさんあったけれど、
あなたのもとに生まれ、育てられて本当に良かったよ。
あの時、あなたの想いがたくさん詰まったあのファイルがあったから、
今こうして前を向いて歩いていけます。
ありがとう。お母さん。