「なんだか またプロポーズされたみたいだね」
父から渡された一冊のファイル。
久しぶりに返った実家のリビングで、
「きちんとファイル」と書かれた表紙を開くと、
父と母と私の名前がいくつか並んでいる。
「俺は母さんと色々考えたぞ」
と神妙な顔の父。
隣の部屋からは、妻と子どもの声が聞こえてくる。
「おまえはあの子達のために、
きちんとしてあげているのか」
返事がすぐに出来ない私。
そういえば保険は、
実家に居た頃のままかもしれない。
「男には責任ってものがあるんだ」
そういえば、
初めて彼女をここに連れてきた日に、
父とそんな話をしたよな。
「ありがとう。これを機会にきちんとするよ。」
帰り道、私は妻と将来のことを語った。
「なんだか、またプロポーズされたみたいだね。」
妻は少し照れ笑いを見せた。