いつもは私の好きなようにしていいよ と言ってくれる彼が 今回ばかりは引かなかった
「私は絶対一軒家がいい!!」
「いや、駅前のマンションだよ。」
ここ最近、ずっとこんな会話をしている。
決着はつかない。
結婚式の準備の時は、あんなに何でも
「いいよ」
って言ってくれたくせに、なんで?
「子供のころから、ずっとマンションで暮らしてたから、庭つきがいい。
この子だって遊べるし。」
大きなお腹をさする。この子にはのびのび育ってほしい。
「・・・」
「どうしたの?」
突然、彼が席を立った。怒ったのかな?
数分後、彼は戻ってきて私の隣に座った。
「実はね、マンションって言うにも理由はあるんだよ。」
「僕はいつ転勤になるかわからないし、万一僕に何かがあった時、
君とこの子が困らないように、いろいろ考えてたんだ。
ごめんね。勝手に。」
私のお腹をさすりながら、オレンジ色のファイルを差し出してきた。
「なに?これ」
開いてみてびっくりした。
受取人に私の名前があった。
いつもは私の好きなようにしていいよ。
と言ってくれる彼が、今回ばかりは引かなかった。
本当に真剣に私たちのことを考えてくれている事がわかって、涙が出た。
「そうだね。マンションでもいいかもね。」
彼の作戦勝ちかな。