いつのまにか 頼もしくなった娘

いつのまにか 頼もしくなった娘

いつのまにか 頼もしくなった娘

それは主人が亡くなって、ちょうど10年目のお盆のときだった。

東京で独り暮らしをしていた長女が、
帰省するなりお土産より先に渡してくれたものは、
一つの封筒だった。

中には「きちんとファイル」
そう書かれていた。

「何?これ?」

「ほら、保険に入り直したって言ってたけど、
どんなのに入ってたかお母さんに言ってなかったじゃん。」

「これって何をするものなの?」

「何もないと思うけどさ・・・」

詳しく長女に聞いてみると、
保険ショップで相談した時に、田舎の私たちのことも心配だからと
一緒に私と次女の分も作ってもらったそうだ。

長女が少し、大きく見えた。

そして「きちんとファイル」を主人の所にそっと置いた。

「あの子も頼もしくなったね。お父さん。」

と自然とつぶやいていた。

・・・あれから5年。
主人の前には、いつも私と娘たちの3冊の
「きちんとファイル」が並んでいる。

来年は長女の結婚が決まっている。
・・・きっと、きちんとファイルがもう一冊増えるのかな。




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