産まれたばかりの孫 満面の笑みで抱きかかえていた父

産まれたばかりの孫 満面の笑みで抱きかかえていた父

産まれたばかりの孫 満面の笑みで抱きかかえていた父

妊娠8ヶ月。
私のお腹も妊婦らしい大きさになってきた。

近くに住んでいる父は定年を迎えてずっと家にいるので、
私が散歩しようとすると「大丈夫か?」と様子を見に来る。

「初めての孫を心待ちにしてるのよ。」
と母が教えてくれた。父が可愛く見えた。

父は5年前に骨髄のがんを患い、
今は落ち着いているもののずっと治療を続けていた。

「最近ちょっとしんどそうだな。」
と思うこともあったが、自分の出産準備に手一杯だった。

7月30日。
息子が産まれた。4200gの大きな息子だった。
産まれる当日、父は主人と一緒にずっとそわそわしていたらしい。

産まれたばかりの息子を恐る恐る抱きかかえながら、
満面の笑顔で顔を近づけていた。
・・・本当に嬉しそうだった。

9月9日。
その父が亡くなった。
がんではなく、最後は脳内出血だった。
急に倒れて救急車で運ばれたときは意識不明の重体で、
その5時間後には息を引き取った。
・・・あっという間だった。

母がお葬式から何まで段取りをしてくれ、
私は赤ちゃんの世話に専念ができた。

「お母さん、手伝わなくても大丈夫?」
「大丈夫よ。お父さんがいろいろ備えておいてくれたから。」

葬儀資料の横にオレンジ色のファイルがあった。
中身は父の保険の一覧だった。

死亡保険の受取人は母。
普段は無口な父の、母への愛を感じた。

父はずっと、初孫を見るまで死ねないと思っていたのかもしれない。
父の想いは息子へもしっかり伝えていきたい。




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