あと何年あるのだろう? この父と語り合える時間

あと何年あるのだろう? この父と語り合える時間

あと何年あるのだろう? この父と語り合える時間

暑い夏のお盆休み、久しぶりに実家に帰省した。

実家に帰るのは3年ぶりで、
先日の海外旅行のお土産をわたすためだ。

「ただいま!」
玄関を開けると、

「おかえり」と母。

「帰ってきたな。」
と元気に父が笑顔で出てきた。

・・・父が足をひきずっている。どうしたのだろう?

母にあとでこっそり聞いてみた。

「半年ぐらい前に脳梗塞で倒れて、足に軽い麻痺が残ったの」
母が打ち明けてくれた。

「どうして早く教えてくれなかったの?」

「何度も言おうとしたけど、
あなたは忙しそうでなかなか電話に出てくれなかったじゃない。
それに父さんが、心配かけるから言うなって・・・」

(おいおい、そんな大事なことなんで教えてくれなかったんだよ。)
私は言葉に詰まった。

その夜、少し背中の小さくなった父に書斎に呼ばれた。

「東京は楽しいか?」

「・・・そんなことより、体調はどうなの?」

「もうだいぶいいよ。それよりこれをお前に渡しておこうと思って。」
父は引き出しから何か取り出した。

「きちんとファイル・・・?」

中を見ると、さまざまな保険の内容が書かれていて、
受取人の欄には母と私の名前があった。

「母さんはああ見えて、弱い人だから・・・」
父はボソッと言った。

父はいつも私に好きなことをやらせてくれた。
東京に行くときも、心配性の母が反対するのをよそに、
応援してくれていた。

まさか父がこんなものを用意してくれているとは知らず、
私はショックを受けた。

「これを渡せてよかった。」
父は微笑みながらつぶやいた。

私の目からは自然と涙がこぼれた。
「これからも親孝行するからね・・・。」

あと何年あるのだろう?
この父と語り合える時間。
・・・本当に大切にしていきたい。そう思った。




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