縁起でもない話なんだけど だからこそきちんとしておくべきなのよ

縁起でもない話なんだけど だからこそきちんとしておくべきなのよ

縁起でもない話なんだけど だからこそきちんとしておくべきなのよ

両親の離婚を知ったのは、僕が中学に入った頃。

朝から晩まで仕事をしている母の代わりに、
2つ下の弟とケンカをしながら、よく家事をしていた。

裕福ではない暮らしのなか、たまに行く回転寿司。

たくさん食べる弟を、母はちょっと不安そうにしながらも、
笑いながらながめていた。

一緒にテレビを見ながら大笑いする家族。

楽しい日常を、母は作ってくれた。

必死で勉強して国立大に合格。
その大学も今年卒業した。

「よくやったね。」
褒めてくれた母は、もうだいぶ歳を取っていた。

「歳取ったね・・・母さん。」

「まだまだ若いわよ!」

なんて笑いながら、母は一冊のオレンジ色のファイルを僕に手渡した。

「でも何かあったときは、頼むよ。」

受取人には僕の名前が書いてある。

「なんだよ、縁起でもない。」

「そうね。縁起でもない話なんだけど、
だからこそきちんとしておくべきなのよ。」

・・・母も歳を取ったのだ。
これまでのように何事も無く、とはいかないのだ。

さっと席を立ち、台所に立つ母の背中に、
僕は静かにつぶやいた。

「これまで本当にありがとうね・・・。
でもこれからは僕が母さんを支えるからさ。
安心しなよ。」

「・・・ありがとう。」

母は振り返らずに一言つぶやいた。




きちんとファイル 無料作成受付中 詳しくはこちら