30年前からの父と母の想いがそこにはあった
父の残したオレンジ色のファイル。
これは、父のお葬式で母が抱きかかえていたものだ。
「なんのファイルだろう?」
幼いころの私は、疑問に思いながらその光景をみていた。
それから30年。
母も亡くなった。
その枕元にはあのときのファイル。
ひらいてみると、母の保障が一覧となっており、
受取人の欄には私の名前。
30年前からの父と母の想いがそこにはあった。
父と母の想いにふれ、
横にいる妻と息子の顔を見ながら、
素直に「私も残したい」と思った。
あれから40年。
今日は私のお葬式。
喪主を務める息子の胸には、
オレンジ色のファイルがしっかり抱きかかえられていた。