一人暮らしを始めて一年。
いつまでも親に甘えていられない。自立して一人前になりたい。
その思いで実家を出た。

健康に気を使っていた母の料理を思い出して作ってみたり、
一人で何でもできるようにならなくちゃ。

そう思って頑張っていた矢先、私は交通事故にあった。
幸いにも二週間入院すれば大丈夫とのことだが、私はとても焦った。

「自分は大丈夫。健康には自信があるから、大きな病気になる訳ない。」

心配をかけたくなかったが、すがる思いで母に電話した。
「二週間入院しなきゃいけない。保険入ってないしどうしよう。」

不安を隠しきれなかった私に、母は言った。
「何も心配しなくていいよ。明日いいものを持っていくから。」

見舞いに来た母が手にしていたものは「きちんとファイル」。
私名義の保障がいくつもあった。
契約日は様々でｓ、ちょうど一年前に加入したものもあった。

オレンジ色のファイルから知った母の優しさ。
実家を出てからもずっと支えてもらっていたのかと思うと、涙が出た。