彼を突き動かしたものは・・・

彼を突き動かしたものは・・・

彼を突き動かしたものは・・・

歳の離れた姉。
その姉と20代のときから、
10年以上お付き合いしている彼。

いつ結婚するんだろ。頼りない人。
実家に来たって全然しゃべらない。
私だったらもっと頼れる人にするのに。

そんなとき、父が病気で亡くなった。

突然の別れに、
母も私たち姉妹もただ泣くばかり。
悲しんでいるあいだにバタバタと葬儀も終わってしまった。

その後しばらくして、姉たちは結婚を決めた。

挨拶にきたときまで、会話の少ない彼。
(ああ、またか。)と私が思いかけたとき、母が口を開いた。

「お父さんのお葬式のときは、本当に色々ありがとう。」

あとで聞くと、あの私たちが泣き暮れているときに、
葬儀の段取りから、何から何まで率先して彼が取り仕切ってくれていたのだ。

そんな彼が、ふとオレンジ色のファイルを差し出した。

「ここにお義父さんの想いが詰まっていたから、
 僕もお手伝いできたんですよ。」

父の入っていた保険のおかげで葬儀などが無事行えたことはもちろん、
そこに込められた家族への想いに、突き動かされたそうだ。

「僕もお父さんに負けないように、彼女を守っていきます。」

そう宣言した彼の目には、いつもとは違う力強い光が宿っていた。

(ありがとう。お兄ちゃん。)
まだ照れくさくて口には出せないけど、
私は心の中でそうつぶやいた。




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